my 'clarity'

It hurts, it still hurts.

私のなかの彼女、「推し」ていた経験

 

久々に元「推し」を見かけました。

ネットの画像で。

しかも、ただのキャラクターです。

 

私の大好きなキャラクターであり、憧れであり、「叶わなかった夢」でした。

 

 

 

セックス・アンド・ザ・シティ」(Sex and the city, 通称:SATC)、かなりの有名作なのでご存知の方も多いと思います。

もしかしたら今の若い方はご存知ないかもしれませんが、アメリカ・ニューヨークで暮らす女性4人組の仕事や恋愛、友情を「これでもか」というほどのファッションセンスと大胆な性描写で描き、一躍多くの女性のバイブルとなったドラマシリーズです。(のちに劇場版が上映。)

 

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大学時代、一挙放送をたまたま運よく見てから、私も一気にこの作品の虜となりました。

メインの女性4人組でも、特にお嬢様気質で「運命の人との幸せ」な結婚のために突き進む、保守的なキュレーター、Charlotte York(以後、シャーロットと呼びます。)が特にお気に入りのキャラクターでした。

 

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彼女はとにかく努力家です。「運命の人との結婚」もただ夢見るだけでなく、色々な殿方とのデートを重ね、そしてドラマのなかなのでだいぶ変わった殿方もいるのですが…。彼女はサクッと切り替えてひたすらに「結婚」という目標に戸惑いもなく突き進みます。

結婚後は子供も作ろうと、不妊治療を試みたり、養子縁組のために奔走したり。

見た目も話し方もお嬢様風な彼女ですが、中身は結構ガッツがあり、ひたすらに頑張るタイプ。

努力と見せつけもせず、しかし誰にも文句を言わせないほど常に最大限の努力をするシャーロットは、

当時大学生でこれからのキャリアや人生について迷っていた私にとって、まさに理想の女性でした。

 

それから、シャーロットの魅力といえば、表情が豊かなところ。

親友の婚約を聞いた時には人目もはばからず喜びのあまり叫び、おまけに泣いてしまう。そんなコロコロと変わる彼女の顔の表現が自分にもあったらと思い、意識しているうちに表情に出やすい人間になったと思います。(この社会では幸か不幸かどちらに転ぶか分かりませんがね笑)

 

「シャーロットのような素敵な女性になりたい

おこがましいですが、いつか誰かに「SATCのシャーロットのようだね」と言われたい、と本気で思っていました。彼女になり替わり、彼女の目線で世界を見たい。彼女から見た世界は、厳しさも「チャレンジ」と見えて、どんなブランドものを身につけているときも、自分はその高価なものに全く釣り合うように感じられるはずです。

 

それまでの人生が彼女とは違い、目立たないタイプの劣等生意識のあった人間なので余計、無理をして彼女に寄せようとしていました。

彼女のように髪型は前髪を伸ばし、ストレートのワンカール。

ファッションはいわゆる清楚系でミディ丈のスカートを好み、ワンピースなどは特にシャーロットのファッションの特徴なので、ワンピースを集めたり。

シャーロットを知る以前も以降も、お気に入りのキャラクター、真似したいキャラクターや人物は沢山できていました。しかし、彼女ほど、外見も中身もそっくりそのままなり替わりたい、皆が自分をシャーロットだと認識してくれたらどれだけ素敵だろう、とまでのめり込んだものはありません。

 

「優等生」というのも私にとってキーワードでした。ただ、陸上を続けつつ、2つの主専攻を優秀な成績で卒業したシャーロットの大学時代というのは、私にとっての目標であり、重荷ともなりました。

 

最初のうちはミミック程度で済んでいましたが、次第に現実と架空の物語を「比較」し自分に劣等感を抱くようになりました。

「どうして私はシャーロットのように努力ができないのだろう」「どうして私はシャーロットのように気持ちの切り替えができないのだろう」「どうしてシャーロットのように周りから好かれないのだろう」「どうして自分はこんなに卑屈で暗いのだろう」「どうして私はこんなふうに生まれ、生きてきてしまったのだろう」

 

どうして私は彼女じゃないんだろう。

 

私の考えや心はあまりに幼稚で根本的な部分を忘れていたのだと思います。

シャーロットのような「恵まれた人間」は極めて少ないこと。

 

生まれた時から裕福な環境に恵まれ、トラウマがなく育ち、「正しい努力の仕方」を教えてもらえる環境にいて、さらに本人もそれを素直に発揮できた。いくら彼女が努力家でも様々な恩恵がなければ、ニューヨークで成功してブランドものに身を包み、いつでも話を聞いてくれる友達がいて…あと人生で足らないものといったら「既婚」と「母親である」というチ欄にチェックがつくだけ・・・・。

 

こんな当たり前のことに気付かなかった私は、その後SATC(もちろんシャーロットも)を見ることを避け、それまでとは全く違う髪型やファッションを好むようになりました。

 

シャーロットの画像を見つけたのはつい先日のことです。いつものように、大好きなファッションの画像をなんとなく探していた時に見つけました。作品の大ファンの私は何年越しに見た画像でも、どのシリーズのどのシーンか、直ぐにわかりました。

 

一瞬「なんとなく疎遠になってしまった友人に出くわした」感があり、勝手に気まずさを感じましたが嬉しいことに「やっぱり人を笑顔にする笑顔の人だな」と素直に思うことができました。

たったこれだけのことですが自分にとっての「残してしまった課題」を克服できたようで、この何年かの自分の変遷もきっと意味があったんだと思うことができました。

 

読者の皆様がお気づきのように、私は相当夢想家です。これでも、日常に支障をきたしていないのが自分でも不思議なくらいです。(余談ですが、よく自分が作り上げた妄想に飲み込まれそうになっています…。)

今も、シャーロットことを「相変わらず綺麗、やっぱり好きだな」と思うことができます。

大げさに聞こえるかもしれませんが、自分の再理解を試みている今、彼女のこと、そして彼女が大好きだった頃の自分を思い出せて心から良かったと思っています。